第46回政策イノベーション研究会
研究会テーマと登壇者
「実践者の立場からナッジの再現性問題を考える」
佐々木周作(大阪大学感染症総合教育研究拠点 特任准教授、行動経済学会理事)
「新潟市行動経済学とデザイン思考研修の報告」
堂前壮史(新潟市)
筈井 淳平(PolicyGarage)
開催日時
2023年1月11日(水)19時00分~20時30分
(終了後30分程度懇親会)
開催方法
Zoom
モデレーター
津田 広和・PolicyGarage
金子 万利奈・PolicyGarage
再現性問題とは何か?実務者の立場による論点の整理
年始から重厚なテーマでしたが、佐々木先生が大変わかりやすく情熱的に説明してくださったこともあり、ナッジが「当たり前」のツールとして活用される一年をスタートするにあたって、とても有意義な内容になりました。
佐々木先生からは、①再現性問題とは何か?、②実務者の立場による論点整理、の主に2点をご紹介いただきました。
①について、キーワードは「内的妥当性」と「外的妥当性」です。「内的妥当性がない」とは、同じ環境で同じ実験をしたときに、結果が再現されないこと。「外的妥当性がない」とは、異なる環境で同じ実験をしたときに、結果が再現されないことです。
前者は研究倫理が疑われるぐらい大きな問題ですが、後者は当たり前の話です。ナッジの先行研究が行われた文脈(例えば英国での納税勧奨の状況)と皆さんがナッジを行う文脈(例えば日本の自治体での納税勧奨の状況)では、対象者も直面している課題も異なるので、同じナッジが同じ効果を発揮するほうが珍しいのです。
そこで②が重要になります。実際に、私たちは、ナッジで解決しようとする文脈や課題を把握し、タッチポイントを吟味し、EASTなどを活用しながらナッジを考案し、小規模テストで効果を確認しておりますが、こうしたステップを踏むことで外的妥当性の問題に対応することができるのです。
こうした取組を積み重ね、ある文脈でうまくいくナッジ、そうでないナッジなどの知見が蓄積され、より効果的なナッジを実践する環境が整うことが期待されます。そのためには、うまくいったナッジだけでなく、思ったような成果を出せなかったナッジについても共有することが大切です。
そこで、ワークでは、「どうすれば未成功事例の共有を促すことができるか?」をテーマとして、共有する摩擦要因と促進要因のブレストを行いました。うまく行かなかった事例を共有するのは、市民や議会、上司・同僚などの目がありためらわれるものです(摩擦要因)。そこで、研究者たちは、効果検証をする計画段階で登録し、効果の有無に関わらず公表する仕組みを整えています。それに習い、私たちも、ナッジの企画段階で公表し評価する仕組み(企画の質を評価し結果は問わない仕組み)を、自治体ナッジシェアやベストナッジ賞などの枠組みで推進することが考えられます(促進要因)。
この他にも、多数のアイデアが出ました。こうしたアイデアを踏まえて自治体ナッジシェアのさらなる改善などにつなげていきます。
研究会報告は以上です。改めて、佐々木先生、本当にありがとうございました。
風しんの抗体検査受検・ワクチン接種勧奨のための動画
最後に情報共有です。佐々木先生も所属する阪大が、風しんの抗体検査受検・ワクチン接種勧奨のための動画を作成しました。めっちゃ面白いです。対象年齢だったら迷わず抗体検査を申し込む最高にナッジの聞いた出来栄えです。是非、自治体でご利用、拡散して頂ければ幸いです。こちらの動画はPolicyGarageと共同で開催した、保健師・自治体職員とのワークショップの内容を踏まえて制作しました。
横浜市生活困窮者自立支援制度の動画
また、9月の研究会でご紹介した横浜市生活困窮者自立支援制度の動画がアップされました。デザインアプローチを用いて作成したものです。BGM作曲・演奏は横浜市職員が担当されているようです(さすが横浜市職員!)
次回の研究会について
来月の研究会は2月8日(水)19時〜です。ポリガレが誇るデザイナー志水さんが登壇し、デジタル庁のサービスデザインチームとして進めているデザイン関連の取組をご紹介します。
なお、志水さんは以下のイベントにも登壇するので、ぜひ皆さんご参加ください。
テーマ:政策デザインの意味と意義&地域を変える政策デザイン
日時:1月20日(金曜日)19時00分から21時00分